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【タイムクライシスオリジナルチーム】バンダイナムコエンターテインメント社インタビュー


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上 博文 ( Hirofumi Kami )

株式会社バンダイナムコスタジオ

1989年、株式会社ナムコ(当時)に入社。ゲームセンター運営部門を経験の後、開発部門に異動。

業務用~家庭用の各種タイトル開発に関わり、ディレクターやプロデューサーを担当。

主な開発タイトルに、タイムクライシス(1996)、ファイナルハロン(1997)、怪盗ルソー(2006)、デッドストームパイレーツ(2010)などがある。

 

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山田 慎也( Shinya Yamada )

株式会社バンダイナムコエンターテインメント

1990年、株式会社ナムコ(当時)に入社。

プログラマーとして、大型体感ゲームや、業務用/家庭用ガンゲームの開発に従事。 

現在はゲームタイトルのデータ分析を支援する部署にて、インフラを構築する業務を担当。

代表作は、ギャラクシアン3(1992)、タイムクライシス(1996)、ことばのパズルもじぴったん(2004)

 

 

<聞き手:達成電器(以下TD)>

本日はお時間をご調整いただきましてありがとうございます。タイムクライシスの開発に携われたお二方にお会いできることを非常に楽しみにしておりました!本日はよろしくお願いします。

最初に、どのようにしてタイムクライシスは生まれたのでしょうか?

 

<上氏(以下敬称略):バンダイナムコスタジオ(以下BNS)>

当時はアーケードゲームが全盛期で、リッジレーサー、アルペンレーサーといった色々なゲームがアイデアを競うように出ていました。その中で、ナムコのガンシューティングゲームはスティールガンナーから定番となり、その後も毎年タイトルを出しておりました。

 

<山田氏(以下敬称略):バンダイナムコエンターテインメント(以下BNE)>

当時はプレイステーションが出るか出ないかという時期で、凄いゲームを遊びたいならゲームセンターに行くしかない。そんな中、開発チームとしては技術を追求したすごいゲームを作りたい、すごい映像を見せたいという熱気がありました。


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<上: BNS>

ポリゴンのCGの技術が出始めの時で、まずは、ウイニングランが出ました。そのあと、エースコンバットに繋がるエアーコンバットが出て、それにテクスチャーがつく技術が加わり、リッジレーサーが出ました。その流れで、ガンゲームをポリゴンでやったらどうなるかとなり、映像表現がリアルになるので、どのようなものにしていこうかというのを考えた記憶があります。

 

<山田: BNE>

上さんはポリゴンでガンゲームを作ろう派だったと思います。僕はその前に2Dのガンバレットを作っていたのですが、射的ゲームを作っちゃったので、少し鬱屈していました。ガンバレットは早撃ち、狙い撃ち、連射と撃ち分けというガンゲームの面白さだけで構成されており、物語がない。そこで、ストーリーのあるものを作ってプレイヤーを唸らせたいというのがあって、二人が出会ったんだよね。そういうゲームを作ろうって。

 

<聞き手: TD>

ポリゴンでいうと、当時その技術を用いて開発するにあたり、技術的な制限はなかったですか?

 

<山田: BNE>

制限だらけですよ。(笑)

 

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<上: BNS>

この当時のゲーム基板って、最先端をいっていたとはいえ、出せるポリゴンの数はそんなになかったのです。なので、当時ポリゴンで描くのは飛行機とか車とかなど、表現しやすいものが多く、人間となるとポリゴンの数が限られているため、数を出すのは難しく、格闘ゲームとかでも、出てくるのは二人のみとかで背景もシンプルなものでした。

 

そんな中、タイムクライシスではポリゴンで描く背景も動くし、敵も5〜6体同時に出てくることが必要で、ポリゴンの数も圧倒的に足りなく、社内報告書では「実現は難しいかもしれない」という内容の進言をしておりました。できないリスクがありますが最善を尽くしますのでやらせてくださいみたいな。(笑)

 

<山田: BNE>

そんな保険かけてたんだ。

そこはゲームシステムでカバーしていきました。レールシューティングなので、行く場所が決まっている。そうすると、背景のポリゴンは視界の外は描かなくてもいい。その分、キャラにポリゴンをまわせる。ガンゲームなのに敵が3体では盛り上がらないので、6体は絶対要るよねとなりました。本当はダイナミックに画角を変えたり、ズームもしたかったんですが、そういうのは全てカットしてポリゴンをキャラにまわしました。

 

<上: BNS>

ヒット判定も3Dで認識するように当初考えたのですよね。

 

<山田: BNE>

結局採用できませんでした。当時のCPUは処理速度が25MHzしかないので、3Dの計算をして、敵を動かして、ヒットチェックを全て行うと、処理速度が追いつかなかったのです。

 

<上: BNS>

そんな時に上手いやり方が見つかったとか言ってくれましたよね。

そのおかげでフレームレートが60fpsになるというので、30fpsと60fps見せてもらって、明らかに違ったので、絶対60fpsって言った覚えがあります。

 

<山田: BNE>

それ俺が死ぬ思いしたやつですよ。

最初、キャラの多さを優先するために30fpsで良いって言われてたのですが、やはり30fpsだとカクカクした動きになるので、僕はそれが不満で、絶対60fpsにするって言ったんです。そのためには、ヒット判定は2Dにせざるを得なかったので、始めの3D判定案はなくなりました。

 

<聞き手: TD>

今までにないものを開発するのは非常に困難なことだと思います。そのような中で、タイムクライシスにペダルをつけることを開発されたのは、すごいことだと思います。

 

<上: BNS>

隠れたり出たりというのは企画当初からのもので、そのためにペダルの提案をしていたのですが、それだけでは自信がなくて、筐体に同じように作用する手で押すボタンもつけると提案していました。

 

<山田: BNE>

ペダルは僕がこだわっていました。銃を撃つ時の姿勢って、自然に片足が前に出るじゃないですか。その銃を撃つ感覚を味わってほしいので、ペダルで隠れるのが自然だと思いました。

 

<上: BNS>

当時一般的なガンシューティングゲームは敵が出た順番に撃つというのしかなく、そこが不満というか違和感を感じてました。

 

<山田: BNE>

“避けたい”というのは、すごく自然だと思うんですよ。銃撃戦をしているのですから。その“避ける仕組み”を、銃を撃っている感覚を持たせつつ実現できるのはペダルしかないと思っていました。撃つと避けるはセットでできないといけない。

 

<上: BNS>

映画とかだと、撃つだけでなく、撃たれて隠れてピンチになるところのスリルがあると思うのですよね。そういうのが表現したかった。

 

<聞き手: TD>

多くの方が関与され、生まれたタイムクライシスの当時の資料が詳細にまとめられていて、非常に印象深いです。その企画書にもスケッチがありますが、主人公であるリチャー・ドミラーというキャラクターはどのように生まれたのでしょうか?


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<上: BNS>

自分がこの企画を思いついた時にリチャード・サンダーという名前がふと思い浮かんだんです。ゲームのタイトルも「リチャード・サンダー 非常手段」と仮に命名してました。当時ハリウッドの映画でも、日本では邦題がつくのが一般的だったので、意図的に漢字のタイトルの方が映画っぽくていいと。で最初は刑事か何かの設定だったと思いますが、プロジェクトが進んでのちに工作員の設定に変わったと思います。

 


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<山田: BNE>

主人公を工作員にしたのは理由があります。それは、人を殺したくない主人公が欲しかったからです。バンバン弾を撃つガンシューティングゲームは当時いくつもありましたが、タイムクライシスが決定的に違うのは、誰かを助けに行くのがミッションであって、たくさん撃つことがハッピーではない物語であるという点です。その物語に合わせて、敵は悪いヤツらだけど銃を撃ちたくない主人公が必要となり、敵を制圧することが主務ではない工作員にしました。

 

<上: BNS>

当時のナムコは残酷な表現をしないゲームが多く、健全なタイトルが多かった。

リアルに人を撃っていいかという議論は常にあり、最終的に出た製品でも、撃った時のエフェクトが血を連想させる赤ではなくて緑に切り替られる機能を搭載し、撃っているのは人間ではないですよと言える形にしておりました。

 

<聞き手: TD>

それはナムコさんの素晴らしい考え方で、感銘を受けるところです。前回、加来氏とのミーティングでも同じようなことを伺っておりました。その中で、ゲーム内の「アクション」というのは「これはお芝居だ、アクション映画を撮っているのだよ、その役を演じているのだよという意図が入っているのではないか?」とおっしゃっていたのですが、その通りでしたね!

 

<上: BNS>

最初は「GO!」という表現でした。ただ、ネイティブの方に聞くと、ちょっと不自然で「アクション」という提案があり、それを採用しました。

当初企画書に書いていた主人公の名前「リチャード・サンダー」もネイティブの方に確認するとちょっとおかしいと指摘されました。一般的なリチャードという名前と、サンダー(雷)という名字から日本語的には「雷 太郎」になってしまうということで、それは格好悪いなあと。

そこで、いくつか候補をもらい、社内メンバーで多数決を取り、「リチャード・ルイス」で決まったのですが、その名前はアメリカのコメディアンで実在すると。その後3回目の多数決にて「リチャード・ミラー」で確定しました。

 

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<聞き手: TD>

資料拝見すると、「リチャード・ミラー」だけでなく、その他のキャラも最初は違う名前があったのですね。

 

<上: BNS>

「ワイルドドッグ」は「クレイジードッグ」でして、「クレイジーキャッツ(日本の有名バンド)」からインスパイアされてそうしました。「レイチェル」も「エレン」とか。それらを米国オフィスの外国人メンバーに話して、印象を聞き、より自然な名前でいくつか候補をもらい、チームで多数決で決めております。「シェルード・ガロ」は企画当初の名前をそのまま採用してます。


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<聞き手: TD>

ガロの部分には、海外メンバーが“お気に入り!”とメモしてますね。(笑)

ネイティブのアドバイスを柔軟に受け入れて、採用するというのは素晴らしいですね。

ところで、タイムクライシスのストーリーはどのように生まれたのですか?

 

<山田: BNE>

当時は企画が上さんで、プログラミングが僕、あとデザイナーの斉藤さんの3人でトップチームを作り、ストーリーとシステムを考えました。その中で、シビアなストーリーが欲しいと僕が熱望しました。というのも、敵が出てきて、ただ撃って気持ち良いというシューティングゲームで本当にいいのか、銃って人を殺める道具なのに、それを楽しむゲームを作ることに疑問というか、罪の意識があったんです。だから、撃ち殺すのが楽しいゲームにしたくなくて、ストーリーを重めにして、最後は「本当にこれで良かったのかな」と思えるものにしたいと意見をあげました。その意図をチームが汲んでくれたのです。

 

<聞き手: TD>

ストーリーはどのタイミングで作られたものなのですか?

 

<上: BNS>

ペダルでガンゲームをというのが最初にあって、ストーリーを作りました。最初の企画では刑事ものだったのですが、その後プロジェクトを組んでどういうストーリー設定にするか話しました。お城の設定にしたのも、テクスチャーを貼ってCGを書くときに、岩肌とかレンガを描写するとリアルにいい絵が作れるというので、お城を舞台にしようと決めたと思います。

 

<山田: BNE>

カリオストロの城に非常に触発されてますね。

舞台を小さい島にしたのもこだわりがあって、物語なので異世界帰還体験をさせたかったんです。いつもと違う世界に行って、目的を達成して何かを得て帰ってくる。そういうのって心に残るじゃないですか。

 

<聞き手: TD>

今振り返って、タイムクライシスでこだわっている部分はありますか?

 

<山田: BNE>

本格的に物理的な挙動を入れたのは、このゲームがナムコでは初めてだったと思います。それまでは格闘ゲームでネックレスや髪が動くというのはありましたが、タイムクライシスは画面にあるもの全部、物理計算して動いています。3D空間に没入させるために必要なものはなんだろうと考えた時に、全てのものが納得する動きをすることが重要だと思っていました。例えば、車が止まる動きなども、ブレーキを踏んでから摩擦係数を計算して止まっています。そんなの普通にモーションデータで動かせばいいのにと自分でも思いますけど。鏡を撃つシーンでも、当たったところから割れて、物理計算して破片が落ちていくようになっているんですよ。

 

<聞き手: TD>

細かい物理計算までされていて、非常に細部まで情熱が行き届いた作品なのですね。没入という観点ですと、タイムクライシスは一つの映画を見ているような感覚があります。

 

<山田: BNE>

作った側の思いが伝わって良かったです。

 

<上: BNS>

映画風にしたいは、ずっと一貫してやってきたことですからね。

 

<聞き手: TD>

開発当時のナムコの雰囲気とかはどうだったのですか?

 

<山田: BNE>

熱かったですよ。皆、情熱的な感じ。

仕事は無茶苦茶忙しかったし、みんなすごく働いてました。

 

<上: BNS>

当時は若かったというのもあるんだと思いますが、昼に出社して深夜まで働くとかよくありました。今はしっかりした環境の会社になって、そのようなことはないですけど。

雰囲気ですが、プロジェクトルームといって、外部と仕切られた空間に、ゲームの制作に関わる人間が集まって、好きなような机配置にしておりました。なんか部活やサークルのような感じでした。

 

<山田: BNE>

そうそう、同人っていうか、インディーズゲームの作り方のノリでした。好きなやつらが集まってワイワイと、その場で、「コンテが気に入らないから、上さん直して」と言ったりして。あと、CGテックチームのエンジニアにスクリプトを打たせたり、本業とは関係ない仕事をやってもらったり。「山田さんひどいですよ〜」とか言いながら楽しくやってました。

 

<聞き手: TD>

オープンマインドで仲の良い印象ですが、衝突とかはなかったんですかね。

 

<山田: BNE>

衝突だらけですよ。めちゃめちゃ喧嘩しました。

ある人が「武器チェンジしたらどうですか。箱を撃ったらマシンガンが出てきてガーっと撃てると楽しそうじゃないですか?」って気楽に提案してきたので、「タイムクライシスはそういうゲームじゃないんだよ!主人公は特殊工作員だぞ!」って説いた覚えがありますよ。

 

<聞き手: TD>

ははは(笑)、マシンガンかあ、それだと倫理観を大事されているチームのこれまでのコンセプトがガラリと変わってしまいますよね。ナムコのゲームは遊び心があって、バトルシティみたいに隠しコマンド*1がタイムクライシスにはあったりするのですか?

 

*1: バトルシティの隠しコマンドとは、FC版のバトルシティのスタート画面であるコマンドを入力すると開発者が意図的に入れたと思われるメッセージが現れること。

 

<上: BNS>

私は知らないですねえ。

 

<山田: BNE>

仕様に入っていないものとして、命中を続けていくとライフが増える*2というのはそっと入れましたね。品質保証部からは最終チェックの時に、これは仕様書に入っていないのでバグだって言われましたが。

 

*2: 40発の弾を連続して命中(敵だけではなく、壊れるオブジェクトなどでも可)すると、ライフが一つ回復する。

 

<聞き手: TD>

タイムクライシスの開発というのは、当時ナムコの他のプロジェクトとは異なるところはありましたか?

 

<山田: BNE>

当時は分業が進んでいたので、ゲームのアイデアを考えるのは企画部門、制作はビジュアル部門であったり、プログラム部門となっていたのですが、なぜかタイムクライシスは企画、プログラム、ビジュアルの3部門のトロイカ体制でやろうとなっていて、そのような開発体制は他のプロジェクトでは採用されてませんでした。それは一つの文化になって、次のタイムクライシスも同じ手法でチームが組まれてました。圧倒的にノリはうちだけ特別良くて、ゲームっぽく作っていなかったよね。

 

<聞き手: TD>

タイムクライシスの企画を通す時、社内で議論は起きなかったのですか?

 

<上: BNS>

この企画を最初に持って行った時から、当時の上司の岩谷さん*3には気に入ってもらえたという記憶です。むしろその次に携わった競馬のレースゲーム(ファイナルハロン)の方が大変でした。

*3: 岩谷徹氏、パックマンの生みの親として有名

 

<聞き手: TD>

タイムクライシスを開発するにあたり、当時の制限でできなかったが、盛り込みたかった機能やアイデアはありますか?

 

<上: BNS>

自分は企画としてやりたいことを言って、プロジェクトの人に実現してもらったかなと思います。仕組みとかも含めて、撃ち応えのあるガンコントローラーだったり、精度、あとブローバックの機構だったりとか。

 

<山田: BNE>

ブローバックは本当はもっと強くしたかったんだよね。もっと撃ち応えがあるように。

あと、ストーリーの分岐とかも入れたかったです。

でも、一番やりたかったことは、敵をもっと生々しく、敵らしく動かしたかったですね。敵の動きはスクリプトで動いていて、敵の近くを撃ったら逃げたり、離れたところを撃たれたら、逆に迫って撃ってくるようにはできているのですが、それらはそもそも妥協で、本当はもっと自律的に動くようにしたかったです。メモリは少ないし、処理能力に限界があったので早々に諦めてしまいましたが。

 

<聞き手: TD>

主人公のリチャード・ミラーはセリフがなく、表情だけで表現されています。これは意図的ですか?

 

<上: BNS>

これは意図的です。プレイヤーが主人公にシンクロして、自分が主人公なんだと思っていただきたかったんです。

 

<山田: BNE>

結構難しいゲームなので、クリアするまでそれなりに苦労するはずなんです。そこで、うまくいかなかった悔しさとか、クリアしたとか喜びは全部、リチャードではなくて、プレイヤー本人の思いなので、そういう心の中の声は、リチャードに喋らせないということにしました。

 

<聞き手: TD>

その視点がナムコさんらしさもあり、さすがですよね。そんな裏話を聞けて嬉しいです。

ワイルドドッグは何かの影響を受けていますか?

 

<上: BNS>

当時色々な映画を見ていて、東洋系の悪いやつにしたら面白いかなあと思った記憶はあるけど、自分が最初に考えた設定よりは年上になったかなと思います。でも何がモデルになったかはあんまり覚えていないですね。

 

<山田: BNE>

当時は「男たちの挽歌」であったり、「リーサル・ウェポン」とかの影響を受けていたと思いますが、一目で悪いと分かるキャラが欲しかったのは間違いないです。感情移入して欲しかったので、工作員リチャードでも倒したいと思わせるために、風貌とかやっている事とか、結構「悪い感」を盛ったと思います。

 

<聞き手: TD>

最初プレイした時は、シェルード・ガロがラスボスかと思っていたのですが、さらに強い敵がボスでいました。そのような構成は最初からあったのですか?

 

<上: BNS>

狙ってたんじゃないかな。当時の絵コンテがあるのですが、当初のシナリオはステージ2でシェルードを倒したらレイチェルを助ける。そして二人で脱出するというのがステージ3だったんです。結局、色々あって連れていけないことになったんですが・・・。

つまり、シナリオの意図としてはステージ2で助けてクリアって思わせておいて、実は違うという「どんでん返し」は入れたかったんです。

 

<山田: BNE>

そうだ、「どんでん返し」は入れたいっていうのはありましたね。

 

<聞き手: TD>

世界観でセルシアという国が出てきますが、今で言うとどこの辺りをイメージされていますか?

 

<山田: BNE>

具体的な国はイメージしていなかったです。

地理感的にはヨーロッパ、地中海辺りじゃないですかね。

 

<聞き手: TD>

今のテクノロジーでは色々とアップグレードなリメイクができると思います。もしそのようなものがタイムクライシスでも行われるとしたら、オリジナルの開発者として残して欲しいことはありますか?

 

<山田: BNE>

このゲームでは何をプレイヤーの心に残すのか、つまりゲームに込めるメッセージ性を残して欲しいと思います。私たちは「正義のために銃で人を殺すのは本当によいのか」をこのゲームを通してプレイヤーに考えて欲しい事として込めました。

それは現代のゲームにはあまりないメッセージだと思います。いっぱいFPSゲームはあるけど、撃ち殺すことを推奨しているものばかりです。タイムクライシスは違っていて、本当にこんなに撃って良かったのか?と思わせるゲームなので、それをぜひあなたで解釈して欲しいと思います。

 

<聞き手: TD>

確かに、エンディングではレイチェルさんを救出し抱えてヘリコプターに向かっているシーンで、助けたのだけど、なんかそれがハッピーなことなのかなと。エンディングではそれぞれで考えてと言うメッセージを受け取りました。

 

<山田: BNE>

そうですね。それが一番伝えたかった。

 

<上: BNS>

現代ではFPSとかリアルなゲームは作れると思いますが、タイムクライシスは自分が映画の主人公になって楽しんでもらうと言うのを大事にしているので、リアルな銃撃ではなく映画のワンシーンに入り込んでいる感覚を楽しんでもらえたらと思います。

何故か敵の弾は当たらないけど、自分のは当たる、そんなヒーロー感をリメイクでは大切にして欲しいと思います。

 

<聞き手: TD>

お二方は今でもゲームをされるのですか?

 

<上: BNS>

最近は気にいったタイトルをほどほどに楽しむ程度ですね。

 

<山田: BNE>

僕は全然時間がなくて、アイマス(アイドルマスター)くらいしかやってないです。

 

<聞き手: TD>

色々現代のゲームはあるのですが、やはりレトロゲームの方が面白いと感じてしまうんですよね。

 

<山田: BNE>

もしかしたら、ゲームシステムそのものの違いとかあるかもしれないですね。当時はゲームシステムに矛盾を入れていくというのが結構あって、タイムクライシスだと撃ちたいけど撃たれたくないから隠れる、でも隠れていると時間がなくなってしまうので、出なきゃいけない。そのように自分の中の矛盾を解消しながらプレイするというのを入れてました。

現代のゲームのように効率主義的にいくというのはなく、ゲームシステム的に葛藤を持たせる、ストーリー的にも助けられそうで助けられない、そう言うのを短い時間で満足させるために、盛り込んでいました。

 

<上: BNS>

その話を聞いて思い出したのが、一方的に撃つのではなく、敵から狙われて自分も撃たれるという恐怖、葛藤を表現したく、隠れられる仕様にしました。でも、プレイヤーには撃たれるのが怖いから隠れっぱなしになるのはやめてほしいので時間制限を入れました。時間制限があるにはそれなりの理由が必要だということでタイムクライシスの夕刻までに、というストーリーができました。

で、いざゲームセンターでプレイテストに出したら、お客さんは隠れることをあまりしないんですよね。隠れる前提で敵が結構撃つという作りにしてたのに、今まで隠れるという経験をしたことないからガンガンペダルを踏んで当たりに行っていて、あちゃーって思いました。プレイヤーの様子を後ろで見ていて、心の中で「隠れろー」なんて思ったりしました。

 

 

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<聞き手: TD>

タイムクライシスというタイトルはいつ決まったのですか?

 

<上: BNS>

これも登場人物の名前と同じ頃に幾つかの候補から多数決で決めました。リチャード・サンダーは私のイチオシで一番にあったので、そこからサンダーがつく候補が多かったですね。あとはデッドラインとか。初回候補にはタイムクライシスはなくて、それをネイティブの方にチェックしてもらった後の候補で出てきて、多数決で決まったんですよね。

 

<聞き手: TD>

今のゲームではバグがあった場合、ネット等でアップデートがすぐできると思うのですが、当時はそのような環境ではなかったと思います。そんな中で、タイムクライシスはリリース後、バグとかあったのですか?

 

<山田: BNE>

これは本当なのですが、バグは全くありませんでした。リリース前に全部潰してから出したので。

開発中にバグをチェックできるツールを作って、背景のヒット漏れを確認したり、スクリプト修正も即座にその場で確認できるようにしていました。開発期間は1年でしたが、デバックには2ヶ月もかかっておらず、デバッグチームに提出する前に自分たちでデバッグをやっています。

 

<聞き手: TD>

タイムクライシスが30年経った今でも多くのファンがいると思いますが、それは何だと思いますか?

 

<山田: BNE>

いろんな説はあると思いますが、ゲームというメディアって作り手の思いが乗るものだと僕は思っているのですね。その人がつまらないと思って作れば、どれほど良くできたものでも何も残らない。逆に稚拙でも、そこに熱量をかけると何かが伝わる。

当時僕らはこのタイトルを全員が愛していました。このゲームを通じて伝えたい、楽しんでほしいという思いが売れるゲームを作らなきゃという思いを超えていた。で、それが新しいことをやってみようとか、今までやっていなかったけど、濃厚なストーリーを乗っけてみようなどに繋がり……。私たちのこのゲームに対する愛情が、機会を通して皆さんへ伝わってくれていたのかな?と思います。


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<聞き手: TD>

最後に弊社のガンコントローラーG’AIM’Eは画面サイズを問わず、大型のスクリーンでも反応する製品となっております。タイムクライシスを大画面でできるというのはどう思われますか?

 

<山田: BNE>

楽しそうだよね。

 

<上: BNS>

当時もアーケードでは29インチと50インチの筐体があったんです。そういった意味ではゲームセンターに近づけたなと思います。ペダルを踏んでのプレイ体験はかなりゲームセンターに近かった。

 

<山田: BNE>

このガンであれば映画館のシアターに投影して複数人でプレイすることも可能だと思いますがどうなんですか。

 

<聞き手: TD>

それもいいですよね、技術的にはできますね。本日は貴重なお話、ありがとうございました!

 

最後に、

上さんと山田さんにもG'AIM'Eをプレイしていただき大変光栄でした。また、貴重な絵コンテをご提供いただきましたバンダイナムコエンターテインメント様に深く御礼申し上げます。ご協力くださりありがとうございました!


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